浮舟短歌

真夜中にいつくしむ雨われを抱く

初期作品集

トビウオの鱗のような海面にのたりと光る漁船の小ささ #tanka #短歌

目を閉じて花火の真下にいるごとく遠く聞こゆる音だけで良い

カーテンの隙間漏れ出る光線は真夏に眠るわれ射す起きろ #tanka #短歌

導入剤眠れ眠れと抱き包む My old friend was darkness.

長梅雨に憂鬱なほど夏遠くばちばち燃えてる誘蛾灯だけ #tanka #短歌

とめどなく頭に溢るる濁流を堰き止めてくれアルプラゾラム #tanka #短歌

お中元われの無力を突き付ける何もできない何もできない #tanka #短歌

病院で海に還ると言ふ祖父が遺したノートの几帳面な字

スコップの音うるさくて目覚めれば最期に見たりふるさとの月 #短歌 #tanka

午睡から目覚めて舐めるトローチはぽっかり空いてる真ん中の穴 #短歌 #tanka‬

重力は孤独が引きつけ合う力深夜の桃をふたりで齧る

真夜中は自由の女神こっそりとソフトクリーム食むUSA晴らし

着火した三十一文字の孤独からスターマインが夜空に弾ける

人生で一度は言ってみたいかも「前の車を追ってちょうだい」

人生と言ふ名の電車を待つてゐる我も我もとそう駆け込むな